メーカー型卸の仕事 | 新商品開発プロジェクト

マルイチは、商品を仕入れて販売する卸売のほか、
当社でしか扱えないオリジナル商品を開発してお取引先に
届ける「メーカー型卸」という機能も有しています。
新商品の開発とは、
どのように行われるものなのでしょうか。
2019年10月に発売を迎えた
『BISTRO缶』のケースをご紹介します。

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    信田缶詰(株)社長
    (2018年にマルイチ産商より出向)

    徳永 和也

    経済学部卒 2002年入社

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    食品事業部
    食品商品部 開発チーム

    小林 俊之

    文学部卒 2006年入社

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    水産事業部 第二本部
    鮭鱒塩冷部 鮭鱒魚卵チーム

    横山 佳純

    経営学部卒 2016年入社

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STORY /01 魚の美味しさを味わえる、唯一無二の商品を創造

「マルイチ」ブランドの魅力を高めるとともにお取引先に付加価値のある商品を提案するため、当社が力を入れている取り組みの一つにオリジナル商品の開発がある。魅力ある商品をカタチにできる実力あるメーカーと協働し、マルイチでしか扱えない商品をつくり出すのだ。
2018年5月、マルイチ・食品事業部の社員が千葉県銚子市にある信田缶詰(株)を訪れた。「同社は、1905年創業の歴史あるメーカー。2015年にマルイチグループとなり、水産事業部と連携して開発したさば水煮やさば味噌煮の缶詰をヒットさせています。このように、信田缶詰のレベルの高いものづくり力を活かして、マルイチブランドの向上につながる新たな商品を開発できないか―それがプロジェクトの発端でした」と、製造以外の開発実務を担った食品事業部所属の小林は振り返る。

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使う素材は、マルイチの調達力と、信田缶詰の豊富な経験を活かせる「魚」。しかし、魚の缶詰は世にごまんとある。差別化の方向を探り、「魚そのものの美味しさをアピールし、女性が好んで購入してくれる商品」とコンセプトを固めていった。
7月に行われた初回の開発会議で、信田缶詰は、さば・いわしを中心とした魚種を使い、さまざまな調味料を用いた試作品を提出。最も味が良くコンセプトにもフィットするものとして、さば・いわしをトマトで調味したものが採用され、本格開発に踏み出すこととなった。

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STORY /02 トライ&エラーを重ねて理想のカタチを追求

原材料が確定すると、市場調査を実施。どのような類似商品があるかを明確にして、その中で新商品がどのポジションを目指すべきかを開発会議の場で話し合った。「味付けを複雑にせず、トマト本来の旨みを活かす」「そのまま食べても美味しい」と方向性が定まった。使う魚の部位、調味素材として採用したトマトペーストの濃度や調味料の配合…信田缶詰は細かなバリエーションをつけて幾つもの試作品をつくり、毎月開かれる開発会議に持ち込んだ。「特に大変だったのが味の決定。味に対する感受性は一人ひとり異なるため、プロジェクトメンバー皆が“美味しい”と感じられる味をカタチにするのに苦労しました。魚の旨みやトマトの風味を最大限活かすため、最終的には奄美諸島産さとうきび原料を100%使用した素焚糖(すだきとう)を採用して味を調整しました」と、信田缶詰の窓口担当を務めた徳永は言う。また、見た目を良くするのも大変だった、と彼は続ける。「トマトペーストを調味液に加工すると茶色くなり、きれいな赤がどうしても出ない。食品は“見て美味しそうと感じる”ことも大切なので、これをどうクリアするかには頭を悩ませました。調味素材の調達先であるカゴメ(株)の担当者の方にはずいぶん苦労をおかけしました」ペーストの原料をフレッシュ感の強いポルトガル産にするとともにコールドブレイク処理で濃縮度を高め、トルコ産トマトピューレを加えて粘度も引き出すなどの試みで、少しずつ理想の状態に近づけていった。

魚の調達をサポートしたのが水産事業部である。その窓口を務めた横山は、プロジェクトに女性の視点を盛り込む役割も担った。「水産事業部では、脂ののり具合や大きさを検討して条件に適う時期や産地のさばといわしをセレクトし、信田缶詰に提供しました。私自身は女性の立場から、試作品の味や見た目、パッケージデザインについて、開発会議で考えを率直に発言しました」と横山はコメント。試食の場では、魚の状態や味についても多くの意見が飛び交った。「より良い商品を模索する過程でノルウェー産など海外の魚で試作したりもしましたが、最終的にはさばもいわしもやはり国産で行こう、と意見がまとまりました」と横山は語る。
『BISTRO缶』という商品名称とパッケージデザインも決定。こうしてプロジェクトは順調に進んでいる、かのように思われた。

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STORY /03 想定外の事態が発生!課題をいかに乗り越えるか

2018年末の経営会議で、食品事業部は『BISTRO缶』について社内決裁を受け、翌年2月に行われる、国内最大級の食の展示商談会「スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)」に出品することも報告した。SMTSには納品決定権を持つ小売業バイヤーが各地から多数集まる。年明けからはSMTSに向けて商品のブラッシュアップを行っていく予定だった。

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ところがここで想定外の出来事が起こる。新商品のうち、さばについてはフィレ(三枚おろしの状態)を使い平型の缶に封入する設計だったが、この缶を扱う輸入代理店が日本から撤退することになったのだ。平型缶の入手先が他に見つからず、いわしと同じ円筒缶に変えざるを得なくなった。缶の形が変われば、魚の形も変えなければならない。「筒切りにしたさばで試作品をつくったら、味が変わってしまった。面が広く身の薄いフィレと違って、筒切りは味のしみ込みが悪い。SMTSが間近に迫ったタイミングで思わぬ課題が現れて、皆、頭を抱えました」横山は苦笑する。しかしもう一度やり直すしかない。調味料の配合を見直したり、魚の脂を落とすための下処理を施すといった試行錯誤を急ピッチで重ね、SMTS直前、なんとか納得のいく味に仕上げることができた。そして迎えた当日、プロジェクトチームは2,400食の試食を用意してバイヤーたちを待った。試食時に取った男女別アンケートでは、さば・いわしともに9割以上の方が「魚の美味しさを味わえる」と回答。女性バイヤーの評価も高かった。発売に向け、大きな手応えを得る機会となった。

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STORY /04 いよいよ完成!お取引先の反響は…?

SMTSとは別に、食品事業部や水産事業部でそれぞれの取引先に紹介したところ、軒並み高評価。「コンセプトに魅力を感じる」「発売したら必ず導入する」という声も多数寄せられた。これまでにない商品で、売り場に新しい風を吹き込む存在だと認められたのだ。「生産体制も整い、秋から小売店の店頭に並ぶことに。“早く販売したい”という声も直接お聞きしており、思い入れのある商品が評価していただけたのだと本当にうれしかった」と小林は表情をほころばせる。「缶詰は男性が購入するケースが多く、市場が飽和状態になる中で購買層をなかなか広げられないことが悩みでした。今回、女性にとっても魅力ある商品をカタチにできたことに意義を感じています」と徳永も語る。手前味噌ですが、と横山は笑いながら、「美味しさにとにかく驚きました。自分たちでこんなに素晴らしい商品が開発できるのだと自信を抱いた。

味付けやパッケージデザインなどについて、女性目線を活かす役割を果たせたことにもほっとしています」。そして彼女はこうも続ける。「今回は複数の事業部門が連携して展開する初めてのプロジェクトでした。小林さんたち食品事業部の方々の仕事の進め方を見ていて、マーケティングやそれに基づく商品開発の手法など、勉強になることも多かった。それぞれの強みを活かしながら協働することで相乗効果が生まれ、より大きな成果を手にできる、その良い実例になったのではないかと思います」一方、小林は、「ラインアップを増やし、『BISTRO缶』シリーズのさらなる強化を図っていきたい」と今後を見据え、次のように展望を語った。「全国トップクラスの調達力を誇る水産事業のほか、マルイチにはりんご和牛信州牛など魅力ある食材を有する畜産事業もある。今後も社内の各部門と連携し、培われてきた知見も集約しながら、これまでにない美味しさをお取引先へ、そしてその先の食卓へお届けしていきたい。それがメーカー型卸としてのマルイチの使命だと、このプロジェクトを経験したことで改めて実感しました」

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